最高裁判所第一小法廷 昭和28年(オ)633号 判決 1953年10月01日
東京都文京区駒込曙町一〇番地九
上告人
坂爪友次郎
藤沢市藤沢四三七番地
被上告人
石沢義衛
右当事者間の建物収去土地明渡請求事件について、東京高等裁判所が昭和二八年五月二六日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
論旨第一、二点は更正決定によるべき場合で上告適法の理由とならず、第三乃至五点は結局事実認定を非難するに帰し、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)
昭和二八年(オ)第六三三号
上告人 坂爪友次郎
被上告人 石沢義衛
上告人の上告理由
第一点 被控訴人提出による昭和廿八年三月十九日付訴状訂正書によれば、被控訴人は、「東京都文京区駒込曙町拾番地の九、宅地百三十九坪六合の内、西北隅の二十三坪の宅地」の明渡を請求してゐる。
然るに原判決は右百三十九坪六合の内、南西隅の二十三坪の明渡を命じてゐる(判決第二頁四行目)。斯くの如きは民事訴訟法第一八六条の大原則に違背した判決である。更正丈では許されぬ事である。
第二点 被控訴人は文京区駒込曙町十番地ノ九の宅地の明渡しを請求してゐる。然るに原判決は判決主文によれば、東京都文京区曙町十番地ノ九と記載ある。蓋し東京都文京区曙町と云ふ町は無い。之れ亦当事者の申立せざる事を判決してゐる。
第三点 原判決は原告の申出た事は全部信用し、何程虚偽を言つても全部信用し、被告の申出た事は如何に正直に言つても全部信用せず特に上告人の弁済した金円は地代に非ずして礼金であるとか、訴外川上が明かに右土地を買つてゐるのに内金による契約だとかの判断を下してゐるのは、原告が三人の弁護士を賴み被告が素人一人が出頭してゐるので、原告代理人への気兼ねと将来の事を考へて素人など負かしても大事は無いとの観念から斯る判決したので、自由心証主義、当事者平等主義の原則に反してゐるのである。
第四点 我が民法は仏蘭西系統主義にして不動産の登記は対抗力のみにて公信力無きものである。依つて登記のみでは真の所有者は不明のものである。本件では土地が訴外川上の物である事は判事も自認してい乍ら故意に登記を理由として、原告の所有なりと判断するが如きは民法の解釈を誤つたものである。
第五点 和解申立書中、三頁二の五行六行に示す通り
昭和廿八年一月五日再度の建築造築承諾書は石沢タケ代理人河西豊明委任状を有す
は判決理由書中、河西個人が単に承諾した如く云つて居るが、現に同番地には杉田、加藤、伊藤三氏等は何れも河西土地管理人の承諾得て造築住居してゐる。
以上